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11.112025
銀行口座の相続手続き|ズバリ必要書類と準備の流れ

銀行口座の相続手続きは、相続の中でも最も時間と手間がかかる分野です。
金融機関ごとに提出書類や手続きの流れが異なり、戸籍の収集や確認作業も複雑です。
しかし、正しい順序で準備を進めれば、手続きをスムーズに完了させることができます。
特に「法定相続情報一覧図」を活用すると、複数の銀行に対して効率的に対応できるようになります。
本記事では、行政書士の立場から、法令を踏まえた正しい相続手続きの流れをわかりやすく解説します。
■ 銀行口座相続の全体像
銀行口座の相続は、主に以下の流れで進めるのが理想です。
① 相続人の特定
② 法定相続情報一覧図の作成
③ 銀行への相続発生連絡
④ 残高証明書の発行依頼
⑤ 遺産分割協議書の作成
⑥ 銀行での相続手続き(払い戻し・名義変更)
⑦ 手続き完了・書類の保管
それぞれの段階について、詳しく見ていきましょう。
① 相続人を特定する(戸籍調査)
まず行うべきは、被相続人(亡くなった方)の相続人を正確に特定することです。
これには「出生から死亡まで連続した戸籍謄本」の取得が必要です。
転籍や改製原戸籍がある場合も含め、すべてを確認しなければ相続人の確定ができません。
この作業を怠ると、のちに手続きがやり直しになるリスクがあります。
行政書士は、戸籍調査の代行や整理支援を通じて、相続人の確定をサポートできます。
② 法定相続情報一覧図の作成・交付申請
戸籍が揃ったら、法務局に「法定相続情報一覧図」の交付申請を行います。
これは、被相続人と相続人の関係を一覧化した法務局発行の公式書類で、
銀行をはじめ多くの金融機関で戸籍一式の代わりとして使用できます。
交付は無料で、複数部の発行も可能。
複数の銀行や証券会社に相続手続きを行う際には非常に有効です。
行政書士は、戸籍情報を整理し、申請書類の整合性チェックや記載支援を行うことができます。
③ 銀行へ「相続発生の連絡」
法定相続情報一覧図が整ったら、各銀行に相続発生の連絡を行います。
この時点で銀行口座は凍結され、入出金や引き出しが停止されます。
銀行は専用の相続手続き担当部署を案内し、
必要書類リストや指定書式を交付します。
一覧図を提示すれば、戸籍一式を提出する手間を省けるため、
この段階での連絡が最も効率的です。
④ 残高証明書の発行を依頼
相続財産の内容を正確に把握するために、
銀行ごとに残高証明書の発行を依頼します。
この証明書は、相続税申告・遺産分割協議・財産把握のために必須の書類です。
依頼時に必要な書類は以下の通りです。
| 書類名 | 提出者 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の死亡を証する戸籍または法定相続情報一覧図 | 相続人代表者 | 戸籍一式の代替可 |
| 相続人代表者の本人確認書類(運転免許証等) | 同上 | |
| 委任状(代理人依頼の場合) | 同上 | 行政書士が補助可能 |
💡発行には1〜2週間かかるため、早めの依頼が理想です。
書類を揃えて一括で申請すると効率的です。
⑤ 遺産分割協議書の作成
残高証明書をもとに、相続財産の全体像を把握したうえで、
相続人全員による遺産分割協議を行います。
協議の結果を遺産分割協議書にまとめ、全員の署名・実印押印を行います。
銀行はこの書類を確認して、相続内容に基づく払い戻しを行います。
行政書士は、協議内容を文書化するための書式作成や形式確認を支援します。
(※相続人間の意見対立や調停対応は弁護士の業務領域です。)
⑥ 銀行での相続手続き(払い戻し・名義変更)
銀行指定の「相続届」「払戻請求書」などを提出し、
遺産分割協議書または遺言書を添付して手続きを行います。
銀行によっては、代表相続人の口座に一括振込し、
その後分配する方式を採用している場合もあります。
金融機関ごとに取り扱いが異なるため、事前に確認しておくと安心です。
⑦ 手続き完了・書類の保管
相続手続き完了後は、次の書類をまとめて保管しましょう。
-
残高証明書
-
払戻明細書・領収書
-
遺産分割協議書の写し
-
法定相続情報一覧図の写し
これらは、税務申告や将来の確認資料として重要です。
■ 行政書士が支援できる範囲
行政書士は、銀行相続手続きにおいて次のような支援を行うことができます。
-
戸籍・除票などの公的書類収集代行
-
相続関係説明図・法定相続情報一覧図の作成支援
-
遺産分割協議書の文案作成支援
-
書類整合性の確認と提出順序のアドバイス
-
他士業(税理士・司法書士・弁護士)との連携サポート
■ スムーズな相続手続きのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① | 相続人を正確に特定し、一覧図を先に作成する |
| ② | 残高証明書を早めに取得し、財産全体を把握する |
| ③ | 銀行ごとの書式・必要書類を事前確認する |
| ④ | 遺産分割協議書は全員の署名・押印をそろえる |
| ⑤ | 専門家の書類サポートで不備・遅延を防ぐ |
早期準備と正確な書類整理が、手続きをスムーズに進める鍵です。



