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12.12025
「デジタル遺産」どう扱う?生前に知っておきたい管理と相続のポイント

インターネットサービスが生活の一部となった現在、故人が残す「デジタル遺産」の扱いが重要性を増しています。
デジタル遺産とは、SNSアカウント、電子メール、クラウドデータ、オンラインバンキング、仮想通貨、電子マネー、オンラインゲームのアイテムなど、オンライン上に存在する資産やデータを指します。
これらは“目に見えない資産”であり、適切な管理がされていないと、遺族が相続手続きを進められない・重要情報にアクセスできないなどのトラブルが発生します。
また、各サービス事業者ごとに対応方針が異なり、法律も整備途中のため、遺族が独自に判断するのは困難です。
本記事では、デジタル遺産の特徴・注意点・生前にできる準備について、行政書士の立場から“手続き面のポイント”を中心に解説します。
■ デジタル遺産の主な種類
デジタル遺産には、多様な種類があります。
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SNSアカウント(X、Instagram、Facebook など)
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電子メール(Gmail、Yahoo!メール、Outlook等)
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オンラインバンキング
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電子マネー残高、ポイント
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仮想通貨(ウォレット・秘密鍵を含む)
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クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox 等)
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オンラインゲームアイテム
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その他デジタルサービスの契約情報
なかでも、金銭的価値を持つ資産(仮想通貨・オンラインバンキング・電子マネー等) は、遺族への情報伝達が不十分だと「存在すら気づかれない」というケースもあります。
■ デジタル遺産がトラブルになりやすい理由
● 1. パスワードが分からないとアクセスできない
二段階認証が設定されている場合、故人の端末・メール・電話番号が必要なこともあります。
● 2. 法制度がまだ完全に整っていない
「デジタル資産」という概念は新しく、民法や個人情報保護法だけでは対応しきれない部分があります。
● 3. 事業者ごとに対応が違う
SNSは相続人への情報提供を認めない事業者も多く、「凍結・削除のみ対応」という場合もあります。
● 4. 仮想通貨は秘密鍵を失うと回収不能
最も注意が必要な分野で、秘密鍵・ウォレット情報がなければ資産を引き継げません。
■ 行政書士がサポートできること
行政書士は、デジタル遺産に関する以下のような 書類作成支援・情報整理支援 が可能です。
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デジタル資産の一覧化支援
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生前整理ノートやデジタル遺言に関する文案作成補助
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サービスごとの規約確認のサポート
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相続手続きに必要な戸籍収集など、事実証明書類の取得
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遺言書への記載項目のアドバイス(一般的事項の説明)
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遺族からの問い合わせに必要な「公的書類」の作成補助
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デジタル遺産に関する資料整理
※交渉代理や権利義務判断・アクセス権の代理行使など、弁護士でなければできない業務は行いません。
■ 行政書士が扱った代表的なケース
【ケース1】SNSアカウントの扱いが不明で手続きが滞った例
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故人が複数のSNSを利用していたが、ログイン情報が不明
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遺族が削除申請に必要な書類を把握できず手続きが進まない
→ 行政書士は
必要書類の整理、申請書類の作成補助、サービス規約の確認支援 を行い、遺族がスムーズに事業者へ問い合わせできる状態を整えました。
【ケース2】仮想通貨ウォレットの秘密鍵の行方がわからない
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故人のパソコンやメモを調査したいが、どこに何があるか整理されていなかった
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相続人が「資産の有無」を把握できない状態
→ 行政書士は
デジタル資産一覧の作成支援、生前の管理方法の助言、問い合わせに必要な書類の作成補助 を行いました。
(※秘密鍵の復元・アクセス代行などは行いません)
■ デジタル遺産で注意すべきポイント
● 1. ログイン情報は「遺言書」には書かない
セキュリティ上の危険があるため、遺言本文にID・パスワードは記載しません。
→ 別紙として管理方法を提示するのが一般的です。
● 2. 「どのサービスを使っているか」の一覧だけでも大きな助け
資産の有無を遺族が把握できるよう、サービス名だけでも残しておくと整理が容易です。
● 3. 金銭価値のあるものは早めの生前整理が重要
特に仮想通貨は秘密鍵の喪失で完全に消滅します。
■ 生前にやっておくべき準備
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デジタル資産の「リスト」を作る
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パスワード管理方法を決める(管理ツール・封印保存など)
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遺言書に“デジタル資産の扱い”を明記する
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家族と最低限の情報を共有する
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定期的に情報を更新する
行政書士は、これらの「整理の仕方」や「遺言への書き方の例示」など、安全な範囲でサポートできます。



