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12.162025
親子間贈与と相続を整理して考える理由

親子のあいだで財産を渡す方法には、大きく分けて「生前贈与」と「相続」があります。
どちらも次の世代へ財産を引き継ぐ手段ですが、
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税金のしくみ
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手続きの流れ
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家族への影響
がそれぞれ違います。
こうした違いをよく理解していないと、
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思わぬ税負担が発生してしまう
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きょうだい間で「不公平だ」と感じる人が出てくる
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手続きが止まってしまう
といったトラブルにつながりかねません。
この記事では、一般的な制度としての違いを整理しつつ、行政書士としてお手伝いできる範囲・できない範囲も意識しながら、親子間贈与と相続を分かりやすく解説します。
(※具体的な税額の計算や税務申告の代理は、税理士の業務になります。)
親子間贈与と相続の基本的な違い
1. 税金の考え方の違い(概要)
生前贈与(贈与税)
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1年間(1月〜12月)に受け取った贈与額に対して「贈与税」がかかる
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原則、年間110万円までは基礎控除で非課税
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それを超える部分には、贈与税の申告・納付が必要
相続(相続税)
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亡くなった方が持っていた財産を合計したうえで「相続税」がかかる
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相続税の基礎控除
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3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
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この金額以内であれば、通常は相続税の申告・納付は不要
どちらも共通しているのは、**「税金のルールは全国一律」**という点です。
ただし、具体的な評価・申告の方法や必要書類は、各地の税務署・市区町村窓口で確認する必要があります。
2. 生前贈与を選ぶときのポイント
生前贈与には、次のようなメリット・注意点があります。
メリット(例)
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少しずつ財産を移しておくことで、将来の相続財産を減らせる
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子や孫の教育資金・住宅取得資金など、必要なタイミングでお金を渡せる
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生前に「誰に何をどのくらい渡すか」を自分の目で見届けやすい
注意点(例)
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年間110万円を超えると贈与税の申告・納付が必要
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不動産や株式などは評価方法が複雑
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亡くなる前3年以内の贈与は、多くの場合相続税の計算に持ち戻される
具体的な特例(教育資金の一括贈与、住宅取得等資金の特例など)の適用可否や税額の試算は、税理士に相談するのが安心です。
行政書士は、こうした制度の「概要説明」や、贈与契約書・贈与に関する合意書など書類作成面のサポートを担当します。
3. 相続で受け取る場合のポイント
相続では、
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相続人を確定する(戸籍の収集)
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財産と負債を洗い出す
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相続人全員で遺産分割協議を行う
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協議内容を「遺産分割協議書」にまとめる
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不動産の相続登記、預貯金の名義変更など各種手続き
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必要あれば相続税の申告(税理士の業務)
といった流れで進みます。
行政書士は、
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戸籍・住民票などの収集
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相続関係説明図・財産目録の作成
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遺産分割協議書など、官公署等に提出する書類の作成
などを通じて、手続き全体を「整理して進める」お手伝いが可能です。
不動産の登記申請そのものは司法書士、相続税の申告は税理士の担当になります。
事例で見る「贈与」と「相続」の整理の仕方
事例① まとまった現金を子に渡したい場合
70代の親が、子どもにまとまった資金(例:500万円)を渡したいと考えています。
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いつ、どのくらい、どのような目的で渡すのか
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一度に渡すのか、数年に分けるのか
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相続発生までの期間をどう見るか
によって、税金面の扱いや手続きが変わってきます。
行政書士が関わる場面としては、
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贈与の趣旨や金額を整理するヒアリング
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贈与契約書、念書などの作成
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必要書類の一覧作成や、税理士・司法書士と連携するための情報整理
などが挙げられます。
贈与税の計算や申告書の作成は税理士の業務となるため、その部分については税理士に相談していただく前提でご案内します。
事例② 生前贈与をふまえた相続の準備
自宅・預貯金などを合わせると、将来的に相続税がかかるかもしれないご家庭。
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毎年一定額を生前贈与する
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教育資金・住宅取得資金としてまとまった金額を贈与する
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最終的なバランスを遺言で調整する
といった選択肢を組み合わせて検討することになります。
行政書士は、
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家族構成・財産構成の洗い出し
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遺言書(特に公正証書遺言)に盛り込む内容の整理と文案作成のサポート
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生前贈与を行った場合の「記録の残し方」のアドバイス
などを担当し、具体的な税額や節税の可否の判断は税理士と連携して進める形が安全です。
事例③ 過去の贈与が相続の場面で問題になったケース
相続の場面になって、
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「長男だけ生前に多くもらっていたのではないか」
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「その贈与は税務上どう扱われるのか分からない」
という不満や不安が噴き出すことがあります。
このような場合、
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いつ・誰に・どのくらい贈与したのか
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贈与契約書や送金記録が残っているか
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相続人全員が、その事実をどの程度共有しているか
を整理することが第一歩です。
行政書士は、
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状況を整理するためのヒアリング
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遺産分割協議書の文案作成
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必要に応じて、家庭裁判所での調停手続という選択肢があることの一般的なご説明
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税務上の取り扱いが問題となる部分について、税理士への相談を勧める
といった形で関わります。
裁判・調停での代理人として交渉するのは弁護士の業務ですので、その点はきちんと区別しておきましょう。
親子間贈与と相続で特に気をつけたいポイント
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贈与の記録を必ず残す
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贈与契約書
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銀行振込の控え
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メモやメールのやり取り
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「3年ルール(持ち戻し)」を意識する
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亡くなる前3年以内の贈与は、多くの場合、相続税の計算に加算される
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家族全員への情報共有
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特定の子だけが多く贈与を受けている場合、早めに説明しておくと後のトラブル防止になります
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相続後の遺産分割協議は必ず書面にする
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口頭だけの合意は、後から「言った・言わない」の原因になります
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それぞれの専門家の役割を知っておく
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行政書士:書類作成・手続き全体の整理、他士業との連携
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司法書士:不動産の相続登記など登記申請の代理
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税理士:贈与税・相続税の申告、具体的な税額計算・節税のアドバイス
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弁護士:相続をめぐる争いの代理交渉・訴訟対応
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行政書士に相談するときに期待できること
親子間贈与や相続について行政書士にご相談いただくと、例えば次のようなサポートが可能です。
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戸籍・住民票などの収集
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相続関係説明図・財産目録の作成
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贈与契約書、遺産分割協議書などの作成
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公正証書遺言を作る際の文案作成サポート・必要資料の整理
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手続き全体のスケジュール整理と、司法書士・税理士・弁護士など他士業のご紹介
筆者は川崎市で相続・遺言を中心とした行政書士事務所を運営していますが、
ここでお話しした内容は、川崎市に限らず全国どの地域の方にも共通する「基本的な考え方」です。
「うちのケースでは贈与と相続、どちらをどう使い分けたらよいのか」
と迷ったら、まずは現状整理から一緒に始めてみましょう。
まとめ
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親子間贈与と相続は、税金の考え方も手続きの流れも異なる
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生前贈与は「いつ・どのくらい・どんな目的で渡すか」を慎重に考える必要がある
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相続の場面では、相続人の確定・財産の洗い出し・遺産分割協議書の作成がとても重要
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行政書士は書類作成と全体の整理役として、税理士・司法書士・弁護士と連携しながらサポートできる
早めに情報を集めて準備しておけば、結果的に家族の負担もトラブルの可能性も大きく減らせます。
親子間の大切なお金の話だからこそ、仕組みを正しく理解したうえで一歩ずつ進めていきましょう。



