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12.302025
公正証書遺言を作る際の費用と手順

公正証書遺言は、公証人の関与のもとで作成される遺言書で、形式面の不備が起きにくく、原本が公証役場に保管される点から、将来のトラブル予防に役立つことがあります。
一方で、作成にあたっては「費用はどれくらいか」「何から始めればいいか」「どんな書類が必要か」など、初めての方ほど不安を感じやすいのも事実です。
公正証書遺言の費用は、主に ①公証人手数料(法令に基づく)②専門家へ依頼する場合のサポート費用 ③実費 の組み合わせで決まります。また、手続きの流れは概ね共通しているものの、財産の種類(不動産の有無など)や相続関係、準備状況によって、必要書類や段取りが変わることがあります。
この記事では、一般的な目安として 費用の考え方 と 作成までの手順 をわかりやすく整理し、つまずきやすい注意点も併せて解説します。
公正証書遺言の費用の内訳
公正証書遺言にかかる費用は、概ね次の3つに分けて考えると整理しやすいです。
1)公証人手数料(法令に基づく)
公証人手数料は、遺言で扱う財産の価額等をもとに算定されます。
金額はケースにより幅があるため、「◯万円」と断定するよりも、財産の内容と概算の根拠を確認して見通しを立てるのが現実的です。
2)専門家に依頼する場合のサポート費用
行政書士等に依頼する場合、たとえば次のような支援が含まれることがあります。
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遺言内容を整理するためのヒアリングと案の作成サポート
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相続関係や財産資料の整理(必要書類の案内・収集の支援)
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公証役場との日程調整や、当日の段取りのサポート
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証人に関する要件説明と調整(必要に応じて)
費用体系は事務所により異なるため、どこまでが料金に含まれるか(追加費用の有無)を事前に確認しておくと安心です。
3)実費(証明書取得費・交通費など)
戸籍・住民票・登記事項証明書などの取得費用、郵送費、交通費等が実費として発生します。
不動産がある場合は資料が増えることが多く、実費も増減しやすい点に注意が必要です。
公正証書遺言の手順
一般的な流れは次のとおりです。
ステップ1:遺言内容の整理(まずは“棚卸し”)
最初に行うのは、「誰に」「何を」「どのように」残したいかを整理することです。
この段階で、財産の一覧(不動産・預貯金・保険など)を作っておくと、次の準備が進めやすくなります。
ステップ2:必要書類の準備
公正証書遺言の作成では、本人確認書類に加えて、家族関係や財産を確認できる資料が求められます。
代表例として、戸籍関係書類、不動産の登記事項証明書、預貯金が分かる資料などが挙げられます(個別の必要書類は公証役場の案内に従います)。
ステップ3:公証役場へ相談・予約(必要書類の確認)
公証役場へ事前に相談し、必要書類や当日の流れを確認したうえで、作成日時を予約します。
時期によっては予約が取りにくいこともあるため、余裕をもって動くのが安全です。
ステップ4:証人の手配
公正証書遺言では、原則として証人2名が必要です。
証人には欠格事由(相続人等はなれない等)があるため、要件を確認しながら準備します。
ステップ5:作成当日(読み合わせ・署名押印)
当日は、公証人の手続きのもとで内容確認が行われ、本人が署名押印して公正証書遺言が完成します。
原本は公証役場に保管され、謄本等が交付されます。
つまずきやすい注意点
費用は「公証人手数料+支援費用+実費」で考える
「総額がいくらになるか」は、財産の内容や依頼範囲で変わります。見積もりを取る際は、**作業範囲(どこまで支援するか)**を明確にするのがポイントです。
財産資料が古いと手戻りが起きやすい
不動産の表示や口座情報などが古いと、作成段階で確認が必要になり、日程が延びることがあります。資料はできるだけ最新のものを揃えます。
判断能力に不安がある場合は早めに動く
高齢の方の場合、「体調や理解力に不安が出てきてから慌てる」より、余裕のある時期に準備しておく方が安心です。必要に応じて、公証役場側の確認事項が増える場合もあります。
紛争性が強い場合は他士業との連携が必要になることも
相続人間の対立が強いケースなど、状況によっては弁護士等の関与が適切な場面もあります。早めに状況整理をして、必要な専門家へつなげられる体制を取ることが現実的です。
まとめ|費用と段取りを「見える化」すれば、準備は進めやすい
公正証書遺言は、形式面の安全性が高く、保管面でもメリットがあります。
一方で、費用は 公証人手数料・支援費用・実費 の組み合わせで決まり、手続きも 内容整理→書類準備→予約→証人→当日作成 という段取りを踏む必要があります。
「まず何から始めるべきか」で迷う場合は、財産の棚卸しと家族関係の整理から着手し、必要に応じて専門家のサポートを活用すると、手戻りを減らしやすくなります。



