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12.112025
不動産の共有を選んで後悔した兄弟の話

(相続で「とりあえず共有」にしようとしている方へ)
不動産を兄弟で相続するとき、
「売らずにこのまま共有にしておこうか」
という選択はとても多いです。
特に川崎市のような都市部や地価の高いエリアでは、
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分筆が難しい
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売るかどうか結論が出ない
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ひとまず公平に持分を分けたい
といった理由から、共有名義が選ばれがちです。
ですが、「とりあえず共有」にした結果、
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売る/売らないでもめる
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固定資産税・修繕費の負担で不満がたまる
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誰も管理せず、空き家化して資産価値が下がる
といったトラブルに発展するケースも少なくありません。
ここでは、兄弟で共有を選んで後悔した“よくあるパターン”をもとに、
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共有の何が問題になりやすいのか
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後悔を減らすために、相続時に決めておきたいこと
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行政書士に頼めること/他の専門家に回した方がよい場面
を整理してお伝えします。
1. 兄弟で共有にした後に起きがちなトラブル例
たとえば、こんなパターンです。
父の自宅土地建物を、兄弟3人で共有名義にした。
長男がそのまま住み続け、次男・三男は別の所に居住。
数年たってから、次男・三男は
「そろそろ売って現金で分けたい」
と希望するものの、長男は
「自分が住んでいるから売りたくない」
と反対。
固定資産税や修繕費も、誰がどれだけ負担するかで揉め始めた――。
このようなケースでは、次のような問題が顔を出します。
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売却には、原則として共有者全員の同意が必要
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「住んでいる人」と「住んでいない人」で、負担感がズレる
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誰がどれだけ費用を出しているか、きちんと記録していない
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「このままなら、自分の持分を第三者に売ってしまいたい」と考える人も出てくる
共有にすること自体が悪いわけではありませんが、
ルールを決めないまま共有にすると、感情面のトラブルになりやすいのが実情です。
川崎市のような都市部では地価が高く、
固定資産税や修繕費の額もそれなりに大きくなりがちなので、
なおさら不満が表面化しやすいと言えます。
2. 「共有」の基本ルールと、つまずきポイント
共有の基本
相続で不動産を共有にすると、一般にこんなルールになります。
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各相続人は「持分」に応じて所有権を持つ
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売却・大規模なリフォーム・建替えなどは、原則として共有者全員の合意が必要
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固定資産税や管理費用などは、本来は持分に応じて負担するのが基本
頭では分かっていても、実際には
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「兄が住んでいるのだから兄が多く負担すべきだ」
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「住んでいないのに税金だけ払わされるのは納得できない」
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「売る・貸す・建て替える、誰がどこまで決めていいのかわからない」
といった不満・不安が積み重なり、
兄弟仲がギクシャクしてしまうことがよくあります。
3. 共有を選ぶなら、最初に決めておきたいこと
共有にしたあとで後悔しないために、
相続のタイミングで最低限決めておくとよい項目を挙げます。
① 持分と費用負担のルールを「書面」で残す
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各自の持分割合(登記どおり)
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固定資産税・保険料・修繕費などを、誰がどれだけ負担するか
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誰か一人だけが先に立替えた場合、どう精算するか
これらを、共有者全員で合意したうえで書面にしておくと安心です。
行政書士は、
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合意内容の整理
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共有者間で確認したルールを文章にまとめる(共有契約書案、覚書案など)
といった形で、書面化のサポートができます。
※税額の計算や具体的な節税策そのものは、税理士の専門領域になる部分があります。
② 利用方法と「大きな決定」の決め方
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誰が住むのか(将来空き家にするのか、賃貸に出すのか)
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売却や建て替えの話が出たとき、どうやって合意を取るのか
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例:原則全員一致、大きな変更は書面で確認 など
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この部分をあいまいにしておくと、
「そんな話は聞いていない」
「勝手に決められた」
といった不信感を生みやすくなります。
行政書士は、共有者の意向を整理しながら、
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管理ルール案
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共有者間の取り決め(協議書・覚書など)の文案
を作ることができます。
すでに争いが顕在化していて、
特定の共有者と対立している状況で交渉を代理することは行政書士の範囲外ですので、
そのような場合は弁護士への相談が必要になります。
③ 将来「共有をやめたい」となったときの選択肢を知っておく
共有を続けていく中で、
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誰かが持分を手放したくなる
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共有を解消して単独名義にしたくなる
ということもあります。
典型的な選択肢は、
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誰か一人が他の共有者の持分を買い取る
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不動産自体を売却し、その代金を分ける(換価分割)
などです。
手続きの進め方そのものは、
内容によって司法書士・不動産業者・税理士・弁護士など、
複数の専門職が関わる場面も出てきます。
行政書士は、
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共有解消に向けた合意内容を整理するためのメモ・合意書案の作成
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必要に応じて、他士業への相談窓口の紹介
といった形で、手続きと連携のハブ役として関わるイメージに近いです。
4. 専門家に相談するときのイメージ
不動産共有で不安やモヤモヤを感じたとき、
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いきなり裁判、という話ではなく
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まずは事実関係と希望を整理する
ところから始めるとスムーズです。
行政書士に依頼するとできること
たとえば行政書士には、次のような相談・依頼がしやすいです。
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相続で不動産を共有にするかどうか、選択肢の整理
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共有者と決めた内容を、書面(覚書・共有契約書など)の形にするサポート
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相続関係図や財産の一覧(財産目録)作成の支援
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手続き全体の流れの説明
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司法書士・税理士・弁護士など、他の専門家に相談したほうがよいポイントの案内
一方で、
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紛争相手方と交渉したり
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裁判所に提出する書面の作成・代理をしたり
といった行為は、弁護士の業務になります。
すでに強い対立が生じている場合や、訴訟・調停を視野に入れている場合には、
早めに弁護士にご相談いただくのが安全です。
川崎市周辺の方であれば、
地元の地価や売却事情、役所の手続きなども踏まえたうえで、
行政書士が「どこから誰に相談するとよいか」を一緒に整理していくこともできます。
5. まとめ 〜「とりあえず共有」にしないために
兄弟で不動産を共有すること自体は、
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不動産を残したまま相続を終えられる
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すぐに売却を決めなくてよい
などのメリットもあります。
ただし、
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持分・費用負担・利用方法のルールを決めないまま共有にする
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書面に残さず「口約束」にとどめる
といった状態は、
「後悔する共有」の典型パターンです。
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共有にする前に、本当に共有でいいのか検討する
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共有にするなら、最初にルールを決めて書面に残す
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迷ったら、書類と手続きに詳しい専門家に早めに相談する
この3つを意識するだけでも、将来のトラブルはかなり減らせます。
川崎市を含む都市部で不動産を相続予定の方、
すでに兄弟で共有していて不安がある方は、
「なんとなく共有のまま」にせず、一度立ち止まって状況を整理してみてください。



