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兄弟間で起こりやすい「預貯金の使い込み疑惑」への向き合い方

兄弟間の財産管理をめぐるトラブル、とくに「預貯金の使い込み疑惑」は、相続と結びつくと感情面・事実面の両方で複雑になりやすい問題です。
高齢化や単身世帯・核家族化の増加により、特定の家族だけが預貯金を管理する場面も増え、結果として「管理状況がわからない」「説明が不足していた」といった理由から疑念が生まれやすくなっています。

相続発生後に通帳の動きが分からない場合、「誰が、どう使ったのか」という点が不透明になり、兄弟間の信頼関係が一気に悪化してしまうことも少なくありません。


1|預貯金の使い込み疑惑が起きる背景

疑惑が生じやすい主な原因は以下のとおりです。

■ ① 管理者が一部の家族に偏る

介護や生活支援をしている家族が預貯金を管理し、ほかの兄弟が内容を把握していないケースはよくあります。

■ ② 出入金の説明不足

生活費・医療費など正当な支出であっても、記録や説明がないことで誤解につながります。

■ ③ 資料や記録の欠如

  • 領収書が残っていない

  • 通帳が複数ある

  • ネットバンキングの履歴が把握できない
    など、後から確認が難しいことも疑念の原因です。

■ ④ 感情的な対立

「介護していた側」と「離れて暮らしていた側」で認識に差があり、不信感が大きくなることもあります。


2|疑惑が生じたときの基本的な考え方

疑惑を解消するためにもっとも重要なのは、

事実・証拠の整理 → 冷静な話し合いの実施

この順番を守ることです。
感情から話し始めると対立が深まり、事実確認が進まなくなってしまいます。

■ 確認すべき資料

  • 取引明細

  • 通帳コピー

  • 領収書

  • 介護・医療費の支払い記録

  • 生活費のメモなど

行政書士は、これらの 資料収集の補助・整理、必要な書類の取得代行 を行うことができます。


3|行政書士に依頼できること

行政書士が対応できるのは、あくまで 非対立的・非紛争的な手続き・情報整理 の部分です。

■ 行政書士ができること

  • 戸籍や通帳コピー取得のための必要書類の案内

  • 資料収集のサポート

  • 預貯金の出入りを一覧化するなどの「客観的整理」

  • 話し合いのための準備書類の作成

  • 兄弟間の話し合いの場に「第三者の立場で同席」

  • 合意が形成された場合の合意書・覚書の作成

  • 争いが予想される場合に専門家(弁護士等)を紹介

※ 法律判断(使い込みの認定)・交渉代理・紛争代理は 行政書士の業務外 のため行いません。

■ 行政書士ができないこと

  • 「使い込みかどうか」の法律判断

  • 返還請求の代理・交渉

  • 調停申立ての代理

  • 裁判の代理

これらは 弁護士の独占業務 となります。


4|話し合いを進める際のポイント

使い込み疑惑が起きた場面では、以下のステップが有効です。

① 資料を揃えて事実を整理する(最重要)

記録が曖昧なまま感情的に話すと必ずこじれます。

② 客観的な第三者を挟む

行政書士が同席することで、

  • 感情が暴走しにくい

  • 話す順番が整理される

  • 必要書類が明確になる
    といったメリットがあります。

③ 証拠が足りない場合は「確認・追加提出」のルールを作る

疑念があっても、すぐに結論を出すのではなく、
「必要な資料を出してから判断する」
という枠組みが重要です。

④ 合意形成ができたら書面化する

  • 合意内容

  • 今後の管理方法

  • 返済や調整が必要ならその方法
    などを明確化することで、後日の誤解を防げます。


5|具体例

※ 行政書士が紛争解決や裁判上の判断をしたように見えない記述に調整済み。

ある家庭で、親の預貯金の一部について
「介護費用として使った」とする兄弟と
「説明を受けていない」と感じる兄弟の間で認識のずれが起きました。

行政書士はあくまで中立的立場で、以下の点をサポートしました:

  • 取引明細などの資料を整理

  • 支出と時期を一覧化し、確認に必要な事項を明確化

  • 話し合いの場で、双方の主張を「事実ベース」で整理

  • 合意に至った事項を文書化

結果、双方が共有する情報が増え、誤解が大きく解消されました。


6|トラブルを防ぐための予防策

  • 日常的に預貯金の記録・領収書を残す

  • 家族間で定期的に管理状況を共有する

  • 管理を一人に集中させない

  • 疑念が生じたら早めに第三者へ相談

「早期相談」ほど効果が大きく、感情悪化を防ぎやすいのが特徴です。


7|まとめ

兄弟間の預貯金使い込み疑惑は、
事実の不透明さ × 感情対立
でこじれやすい典型的な問題です。

行政書士は争いの判断や代理はできませんが、

  • 資料整理

  • 必要書類の取得案内

  • 合意書の作成

  • 冷静な話し合いの場づくり
    など「紛争を未然に避けるサポート」に大きく貢献できます。

疑念が生じた場合は、早めの相談と事実整理が、
円満な相続と家族関係の維持につながります。

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