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12.252025
相続人が「代償分割」の意味を誤解して揉めたケース

相続手続きの現場では、「代償分割」という言葉の理解不足が原因で、相続人同士の話し合いが長期化してしまうケースが少なくありません。
代償分割とは、遺産の中に不動産など分けにくい財産がある場合に、特定の相続人がそれを取得し、代わりに他の相続人へ金銭(代償金)を支払うことで、全体の公平を図る分割方法です。
制度自体は比較的シンプルですが、
「代償金はいくらが妥当なのか」
「いつ、どのように支払うのか」
「相続税や登記との関係はどうなるのか」
といった点を正しく理解していないと、認識のズレから感情的な対立に発展しやすくなります。
なぜ代償分割は誤解されやすいのか
代償分割が揉めやすい背景には、次のような要因があります。
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不動産の価値は一見して分かりにくい
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相続人ごとに「公平」の捉え方が異なる
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相続税・登記・資金準備など複数の手続きが絡む
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「専門家にどこまで相談できるのか」が分かりにくい
特に都市部では、不動産が相続財産の大部分を占めるケースが多く、評価の考え方や支払条件の認識違いが、話し合いを複雑にしがちです。
代償分割でよく起こる誤解
代償分割を巡る相談では、次のような誤解が頻繁に見られます。
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「代償金は必ず現金一括で払わなければならない」
→ 原則は金銭ですが、支払方法や時期は相続人全員の合意次第です。 -
「固定資産税評価額=必ずしも公平な金額」
→ 評価の考え方には複数あり、基準の違いを理解しないと不満が生じます。 -
「後で話せばいい」と条件を曖昧にしたまま合意する
→ 支払時期や方法を明文化しないことが、後日の紛争につながります。
行政書士が関与できる役割と限界
代償分割では、税務判断や不動産鑑定、登記申請など、複数の専門分野が関係します。
行政書士が担う主な役割は、次のような部分です。
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代償分割の制度や考え方の整理・説明
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相続人全員の意思を確認しながらの遺産分割協議書の作成支援
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手続き全体の流れや注意点の整理
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必要に応じた他士業(税理士・司法書士等)との連携支援
一方で、税額の確定判断や不動産価値の最終的な算定、当事者間の法律的な交渉代理は、他の専門家の領域となります。
それぞれの専門分野を適切に分けて進めることが、結果的にトラブル防止につながります。
代償分割を円滑に進めるための実務的ポイント
代償分割をスムーズに進めるためには、次の点が重要です。
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分割方法や代償金の考え方を早い段階で共有する
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支払時期・方法・条件を書面で明確にする
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「誰が・どこまで・何を判断するのか」を整理する
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必要に応じて専門家へ早めに相談する
話し合いがこじれてから対応するよりも、初期段階で整理する方が、時間的・精神的な負担は大きく軽減されます。
まとめ|代償分割は「理解不足」が最大のリスク
代償分割は、不動産を手放さずに相続をまとめられる有効な方法ですが、
制度の理解不足や条件整理の甘さが、そのまま相続人間の対立につながりやすい側面もあります。
重要なのは、
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制度を正しく知ること
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無理のない条件を話し合うこと
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手続きを専門家と役割分担しながら進めること
代償分割に不安を感じた段階で、相続手続きに詳しい行政書士へ相談することで、将来のトラブルを未然に防ぐことが可能です。



