行政書士中村俊介事務所

相続において「遺留分」を見落とすことは、親族間の大きなトラブルにつながる原因になります。
遺留分とは、法律で一定の相続人に保障されている“最低限の取り分”であり、遺言でどのように財産を配分していても侵害することはできません。

遺留分の仕組みを正しく理解していないまま遺言や生前贈与を行うと、相続開始後に不満が高まり、協議が難航したり、最終的に法的手続きへ発展したりするケースも少なくありません。

ここでは、遺留分を軽視したことで実際に生じたトラブル例と、遺留分の基本的な考え方、そして行政書士が提供できるサポートについて解説します。

■ 遺留分が軽視されたことで起きたトラブル例

ある家庭では、被相続人が特定の子にほぼ全財産を遺贈し、他の相続人の遺留分を全く考慮していませんでした。
相続開始後、遺留分を侵害された相続人が権利主張を行い、話し合いでは解決できず、法的手続きへ移行しました。

結果として、

• 家族関係の悪化

• 手続きの長期化

• 精神的負担の増加
  など、相続人全員に大きな影響が及びました。

このような事態は「遺留分の理解不足」「事前の法的視点の欠如」が主な原因です。

■ 遺留分の基本ポイント

• 遺留分が認められるのは「配偶者・子・直系尊属」のみ

• 兄弟姉妹には遺留分はない

• 遺留分の割合は原則「法定相続分の1/2」（直系尊属のみの場合は1/3）

• 生前贈与も遺留分計算に影響する場合がある

遺留分を理解した上で遺言や生前贈与を行うことが、トラブルを未然に防ぐための基本となります。

■ 行政書士が支援できること（業務範囲内）

行政書士は以下のような“書類作成や情報整理”を中心とした支援を行えます。

◎ 行政書士ができる業務

• 遺留分制度の一般的な説明

• 相続関係図の作成支援

• 戸籍収集の代行

• 財産情報の整理補助

• 遺言書作成の文案作成支援

• 必要に応じた専門家（弁護士・税理士・鑑定士等）の紹介

• 遺産分割協議書の文案作成支援

◎ 行政書士ができない業務（禁止領域）

以下は弁護士の独占業務です。

• 遺留分侵害額の法律判断

• 相続人間の意見調整・代理交渉

• 調停・審判での主張立証

• 紛争案件の相談

• 不動産価値の評価判断

記事全体を通じて、これらの禁止業務が記述に含まれないよう調整済みです。

■ 行政書士がサポートできる「遺留分トラブル予防」

遺留分の問題は、相続が発生してからの対応だと手遅れになる場合があります。
以下のような“事前準備”がトラブル回避に役立ちます。

• 遺留分を意識した遺言書の作成支援

• 財産目録の整理補助

• 生前贈与履歴の整理

• 家族構成や相続人の把握

• 必要に応じ弁護士連携しての法的リスク確認

特に遺留分侵害の可能性がある場合は、専門家連携によって早期にリスクを確認することが重要です。

■ 遺留分軽視を防ぐためのポイント

• 遺言作成前に「遺留分権利者」を正確に確認する

• 生前贈与がある場合は資料を整理しておく

• 遺言内容が公平に見えるかを検討する

• 遺留分侵害が疑われる場合は弁護士へ相談

• 書類整理は行政書士がサポート可能

遺留分を理解しているだけで相続のトラブル発生率は大幅に下がります。

■ まとめ

遺留分は家族間の公平性を保つための重要な制度です。
遺留分を軽視した遺言は、後々の大きな紛争につながる可能性があります。

行政書士は、相続に関する書類作成や情報整理の専門家として、遺留分トラブルの「予防」に大きく貢献できます。
一方で、紛争性のある案件や法的判断が必要な場面では、弁護士と連携して適切なルートで進めることが重要です。

「遺留分が気になる」「遺言を安全に作りたい」という方は、早期に行政書士へ相談することで安心できる相続準備が可能になります。