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11.242025
ペットを遺すための相続プランとは? いま注目される新しい備え方

近年、高齢者の単身世帯や核家族化が進む中で
「自分が亡くなった後、ペットの世話はどうなるのか」
という不安を抱える方が増えています。
日本の民法ではペットは「物」として扱われるため、
人と同じように「相続させる」ことはできません。
そのため、
飼い主の死後、ペットが適切に世話を受けられるようにするための“備え” が必要となります。
本記事では、行政書士の立場から
「ペットの将来を守るための法的仕組み・準備方法」
を、わかりやすく解説します。
1.ペットには相続権がない ― だからこそ事前準備が必要
法律上、ペットは「相続財産」ではなく「物」。
そのため、
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ペット自身に財産を渡すことはできない
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法律上の相続人にはならない
という制約があります。
飼い主が何も準備しないまま亡くなると、
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誰が飼育を引き継ぐか決まらない
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飼育費をどう負担するか不明
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親族が世話をできず、施設への預け入れを検討する事態
など、トラブルが起こりやすくなります。
2.ペットを守るために利用できる主な方法
■① 遺言書で「飼育を引き継ぐ人」+「必要費用の遺贈」を明確化
ペットのために最もよく使われる方法です。
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誰に世話を任せるか
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その人へどのくらいの費用を渡すか
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ペットの健康管理・生活環境の希望
などを遺言書で明記します。
行政書士は
遺言の形式要件の確認や文面作成のサポート を行うことができます。
※世話を依頼された人に法的義務を課すことはできないため、
事前に本人同意を得ておくことが重要です。
■② ペットのための「信託」制度(ペット信託)
信託とは、
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飼い主が預けた財産を
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信頼できる受託者が管理し
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指定された目的のために使う
という仕組みです。
ペット信託をつくることで、
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飼育費を計画的に使える
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飼育者への費用支払いをルール化できる
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透明性のある管理が可能
というメリットがあります。
行政書士は
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信託の概要説明
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必要書類の作成支援
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他士業(弁護士・司法書士・税理士)との連携
といった範囲でサポートできます。
※信託契約の法律的検討やトラブル対応、信託財産の登記などは
行政書士の業務範囲外のため、専門士業との協働が必要です。
■③ ペットの受け入れ先の確保
ペットの将来を守るために重要なのが 受け入れ先の事前同意 です。
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家族・親族
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信頼できる友人
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ペットシッター
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保護団体
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里親制度・終生預かり施設
など、多様な選択肢があります。
遺言書や信託に記載する前に、
必ず受け入れ先と「同意」を取っておく必要があります。
3.行政書士の支援範囲
行政書士ができること
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遺言書の文案作成支援(形式面の確認・文章整備)
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ペット相続プランの相談対応(制度説明)
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財産や希望内容の整理
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関係者への説明資料の作成
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他士業との連携サポート
行政書士ができないこと(他士業の領域)
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信託契約の法的代理・交渉
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調停・訴訟の代理
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紛争性のある案件の法律判断
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相続登記の代理(司法書士)
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信託税務の判断(税理士)
必要に応じて、弁護士・司法書士・税理士と連携し、
適切な専門家につなぐ形で支援します。
4.ペットを遺す相続プランの作成手順
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ペットの情報整理
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引き継ぎ先候補の選定・同意
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飼育費用の概算
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遺言書・信託などの方式を選択
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必要書類の作成
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定期的な見直し
早期に準備することで、
「飼い主の死後に世話が行き場を失う」という最悪の事態を防げます。
5.まとめ
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ペットには相続権がないため、飼い主の事前準備が不可欠
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遺言・信託・受け入れ先の確保を組み合わせるのが効果的
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行政書士は書類作成や制度説明の専門家としてサポートできる
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紛争性がある案件は弁護士、登記関係は司法書士など、
他士業と協働して進めることが重要
大切なペットの未来を守るためにも、
「まだ元気だから大丈夫」と考えず、
元気なうちに準備を開始することをおすすめします。


