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不動産共有相続のトラブルを防ぐ方法

不動産共有相続のトラブルを防ぐ方法

相続で不動産を引き継いだとき、相続人全員で共有名義にしたまま放置されているケースは少なくありません。
一見「平等」で良さそうに思えますが、実務上はトラブルの温床になりやすい形です。

  • 固定資産税や修繕費を「誰がどれだけ負担するのか」

  • 将来、売却・賃貸・建て替えなどを「どう決めるのか」

  • 共有者の一人が連絡不通・高齢・認知症になったときどうするのか

こうした点が曖昧なまま時間だけが過ぎると、
家族関係の悪化や、不動産の価値低下、最終的には紛争化につながることがあります。

この記事では、行政書士として相続・遺言の相談を受ける立場から、

  • 不動産の共有相続で起こりがちな問題

  • トラブルを防ぐための基本的な考え方

  • 行政書士が関われるサポート内容と、他士業との役割分担

を整理して解説します。


1. 共有相続で起こりやすいトラブル

不動産を複数人で共有すると、主に次のような場面で問題が表面化します。

① 管理費・固定資産税の負担でもめる

  • 誰がどれだけ負担するのか事前に決めていない

  • 実際に支払っている人と、ほとんど負担していない人がいる

  • 長年の不公平感が積み重なり、相続人同士の関係が悪化する

② 売却・賃貸の意思決定がまとまらない

  • 「売りたい人」と「残したい人」で意見が割れる

  • 一部の共有者が連絡に応じない/海外・遠方在住で話が進まない

  • 結果として、建物が老朽化し、不動産としての価値が下がる

③ 共有者の高齢化・認知症で手続きが進まない

  • 共有者の一人に判断能力の低下が見られる

  • 成年後見人選任などが必要になり、協議・手続きが重くなる

本来なら「遺産分割の段階でどうするか」を決めておくべきところを、
とりあえず共有にしてあとで考える
という選択をすると、このような問題が先送りされてしまいます。


2. トラブルを減らすための基本方針

共有相続のトラブル防止で大事なのは、次の3つです。

① 共有のまま放置しない

  • 相続発生後、早い段階で遺産分割協議を行う

  • 「誰がその不動産を引き継ぐのか」「売却するのか」を話し合う

  • 話がつかない場合でも、「当面の管理方法・費用負担のルール」だけでも決めておく

② できれば共有を解消しておく

代表的な選択肢としては、

  • 不動産を売却して代金を分ける

  • 特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う

  • 区分できる物件であれば、物理的・法的な分割を検討する

などがあります。
どれが適切かは、家族構成・資産状況・今後の利用予定によって変わります。

③ どうしても共有にするなら「ルールを文書で決める」

共有にせざるをえない場合は、せめて次のような内容を書面で合意しておくと安心です。

  • 固定資産税・修繕費などの負担割合と支払方法

  • 賃貸する場合の賃料の受け取り方・管理方法

  • 将来売却する場合の条件(いくらを目安にするか など)

  • 管理の窓口になる人(代表共有者)の決め方

これらは「共有物管理に関する合意書」などの形でまとめておくと、
後々の「言った/言わない」の争いを減らすことができます。


3. 行政書士ができること・できないこと

不動産の共有相続に関して、行政書士が関われるのは主に次のような部分です。

行政書士がサポートできる主な内容

  • 相続の基本的な仕組みや、不動産共有のメリット・デメリットの説明

  • 戸籍の収集や相続関係説明図の作成(誰が相続人かを整理)

  • 財産目録の作成補助(不動産や預貯金などの一覧表づくり)

  • 遺産分割協議の内容をもとにした

    • 遺産分割協議書

    • 共有物管理に関する合意書
      などの書面作成

  • 成年後見制度の利用や遺言作成検討など、今後の方針に関する一般的なアドバイス

  • 必要に応じて、弁護士・司法書士・税理士・不動産会社など、
    他の専門職との連携・紹介

行政書士の業務範囲を超える部分(他士業の領域)

以下のような事項は、行政書士ではなく別の専門職が担います。

  • 相続人同士が対立しているケースでの、
    代理人としての交渉・調停・訴訟対応(→ 弁護士)

  • 不動産の相続登記の申請代理(→ 原則、司法書士)

  • 相続税額の具体的な試算や、申告書の作成・提出(→ 税理士)

  • 専門的な不動産鑑定評価(→ 不動産鑑定士 等)

行政書士は、これら他士業の分野に踏み込むことはできません。
ただし、相続の全体像を整理しつつ、**「どの段階でどの専門家に相談すべきか」**を一緒に考える役割は十分に担えます。


4. 典型的なケースイメージ

実際のご相談でも、次のようなパターンがよく見られます。

ケース1:兄弟姉妹で親名義の自宅を共有したが、管理が負担に

  • 共有名義にしたまま数年放置

  • 固定資産税や修繕費を、実家近くに住む人だけが負担

  • 「売りたい人」と「残したい人」で意見が割れる

このようなケースでは、

  • まずは相続人全員の意向を整理

  • 不動産会社等に査定を依頼し、おおよその価格を把握

  • 売却か、特定の人が取得するか、いくつかの案を一緒に検討

  • まとまった内容を遺産分割協議書に落とし込む

といった流れで、合意内容を「きちんとした書面」にすることがポイントになります。
登記申請自体は司法書士などに依頼しつつ、行政書士はその前段階の整理と書面作成を担当するイメージです。

ケース2:共有のまま賃貸を始めたが、ルールがなく行き詰まった例

  • 共有不動産を賃貸し、家賃は代表者の口座に入れていた

  • 数年後、「どう分配されているのか分からない」と不信感が生まれる

  • 修繕費の負担についても「どこまでやるか」で対立

こうした場合には、

  • 家賃・経費の扱いを整理した「共有物管理に関する合意書」

  • 管理業者に任せるか、誰が窓口になるかのルール

を文書化しておくことで、
お金の流れと役割分担を透明にすることができます。


5. 共有相続で特に注意したいポイント

不動産共有相続で「これは押さえておきたい」というポイントをまとめると、次のとおりです。

  1. 共有名義をゴールだと思わない

    • 共有はあくまで「一時的な仮の状態」と考えた方が安全です。

  2. 相続登記は必ず行う

    • 2024年以降、一定の場合には相続登記が義務化されました。

    • 名義を故人のまま放置すると、後の世代で手続きがさらに難しくなります。

  3. 税金・評価の問題は税理士等と連携して検討する

    • 不動産評価や相続税の扱いは、専門的な判断が必要なことが多い分野です。

  4. 相続人の高齢化・判断能力低下も見据える

    • 共有者の一人が認知症等になった場合、売却や分割が難しくなります。

    • 必要に応じて、成年後見制度の利用を含めた検討が必要です。


6. まとめ

不動産の共有相続は、

  • 「とりあえず平等だから」と選びがちな一方で、

  • 長期的にはトラブルの火種になりやすい形でもあります。

大切なのは、

  • 共有名義を放置せず、早い段階で方針を話し合うこと

  • 合意した内容を、きちんとした書面にしておくこと

  • 行政書士・司法書士・税理士・弁護士など、
    それぞれの専門家の役割を踏まえて相談先を選ぶこと

です。

行政書士は、

  • 相続の基本整理

  • 相続人・財産の把握

  • 協議内容を文書にまとめる部分

などでお手伝いできますし、他の士業と連携しながら、
相続手続き全体をスムーズに進める「入口役」としても機能できます。

「うちのケースだと、売却・共有継続・特定の相続人への名義集中、どれが現実的?」
「まず何から手をつければ良いのか分からない」

といった段階からで構いません。
悩みが大きくなる前に、早めに専門家に相談していただくことをおすすめします。

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