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12.122025
相続税がかからない場合でも手続きは必要ですか?

「相続税はかからなそうだけど、何か手続きはしないといけないのかな?」
相続のご相談を受けていると、このようなご質問をよくいただきます。
たしかに、遺産の総額が基礎控除額
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
以内であれば、一般に相続税の申告は不要です。
しかし 相続税の申告が不要でも、相続の手続きそのものが不要になるわけではありません。
とくに次のような手続きは、多くのご家庭で必要になります。
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相続人・相続財産の確認
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遺産分割協議(遺産をどう分けるかの話し合い)
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預貯金・不動産などの名義変更
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必要に応じて、相続放棄や限定承認などの検討
これらを行わずに放置すると、あとになって相続人同士のトラブルや、不動産の売却ができない・税金の通知が届かないといった不都合が生じるおそれがあります。
私の事務所がある川崎市のような都市部では、不動産や預貯金の名義変更をきっかけにご相談をいただくケースが多く見られますが、これは全国どこでも共通するポイントです。
1.相続税がかからないのに、なぜ手続きが必要なのか
相続税は「一定額を超える大きな遺産」に対してかかる税金です。
一方で、**相続手続きは「財産の名義や権利をきちんと引き継ぐための作業」**であり、税金の有無とは別の話です。
たとえば次のようなケースでは、相続税がかからなくても手続きが必要です。
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自宅土地建物を相続するので、登記名義を変更したい
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銀行口座を解約して、相続人で分けたい
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自動車の名義を変更したい
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亡くなった方の年金や公共料金の精算をしたい
これらは「誰が相続人か」「何をどのように分けるか」が決まっていないと進められません。
そのため、まずは 相続人と財産の全体像を整理し、遺産分割協議で分け方を決める 必要があります。
なお、相続税がかかるかどうかの具体的な判定や、節税の相談については、税理士や税務署など税務の専門窓口に確認されることをおすすめします。
2.相続税がかからないケースでも必要になる主な手続き
(1) 相続人・財産の確認
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被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
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相続人全員の戸籍・住民票
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不動産の登記事項証明書や固定資産税の納税通知書
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預貯金・証券・生命保険・負債の資料 など
これらを集めて「相続関係説明図」「財産目録」として整理すると、その後の手続きがスムーズになります。
行政書士は、このような書類の収集や一覧表の作成をサポートできます。
(2) 遺産分割協議と遺産分割協議書
誰がどの財産を引き継ぐのか、相続人全員で話し合って決めるのが遺産分割協議です。
合意した内容は、のちの証拠と手続きのために 遺産分割協議書 として書面にしておくことが重要です。
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不動産の名義変更
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銀行口座の解約・名義変更
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有価証券の名義変更
など、ほとんどの手続きで遺産分割協議書の提出を求められます。
行政書士は、この協議書や相続関係説明図などの「法的な書類の作成」を業務としてお手伝いできます。
(3) 不動産の相続登記(名義変更)
不動産を相続した場合、法務局での 相続登記(名義変更) が必要です。
相続登記そのものの申請手続きは、司法書士の専門分野ですが、
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登記に添付する遺産分割協議書や相続関係説明図の作成
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必要な戸籍・住民票・評価証明書などの収集
といった 事前準備の部分は行政書士がサポートできます。
登記の具体的な方法については、司法書士に依頼するか、法務局の相談窓口で説明を受けて進めましょう。
(4) 銀行・保険・その他の名義変更
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預貯金口座の払戻し・解約
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投資信託や株式の名義変更
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生命保険金の請求
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自動車・各種会員権の名義変更 など
これらも、各金融機関・保険会社の指定書類に沿って手続きが必要です。
遺産分割協議書のコピーや戸籍類が必要になることが多いため、最初にしっかり書類を整えておくと効率的です。
(5) 相続放棄や限定承認を検討したいとき
借金が多そうな場合や、財産状況がよく分からない場合には、相続放棄・限定承認 を検討することもあります。
これらは家庭裁判所での手続きとなり、申述期限や必要書類が厳格に決まっています。
行政書士は、事情を整理するメモづくりや必要資料の洗い出しなどをお手伝いし、
実際の申立てについては弁護士・司法書士など適切な専門家をご紹介する、という形でサポートするのが一般的です。
3.よくあるつまずきポイント
相続税がかからないケースでも、次のような点でつまずきやすくなります。
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「税金がかからないなら急がなくていい」と名義変更を何年も放置してしまう
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戸籍や残高証明書の集め方が分からず、手続きが途中で止まってしまう
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兄弟姉妹で話し合いがまとまらず、協議書が作れない
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負債が後から見つかり、相続放棄の期限を過ぎてしまう
こうしたトラブルは、一度起きてしまうと解決に時間も費用もかかります。
「相続税がかからないからこそ、落ち着いているうちに基本的な手続きを終わらせる」 ことが大切です。
4.行政書士に相談できること・できないこと
行政書士に依頼すると、たとえば次のようなサポートが受けられます。
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戸籍・住民票など相続関係書類の収集
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相続関係説明図・財産目録の作成
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遺産分割協議書など各種書類の作成
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市区町村への各種届出書類の作成・提出代行
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手続きの全体スケジュールの整理とご説明
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必要に応じて、司法書士・弁護士・税理士など他士業との連携窓口
一方で、
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相続登記の申請代理
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裁判所における代理人としての活動
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相続税の申告書作成や、具体的な節税スキームの提案
などは、それぞれ司法書士・弁護士・税理士の業務領域です。
これらが必要な場合は、行政書士から他の専門家をご紹介したり、連携して進める形になります。
5.まとめ
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相続税がかからない場合でも、「相続人と財産の確認」「遺産分割協議」「名義変更」などの手続きは必要です。
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とくに不動産の相続登記や預貯金の解約・名義変更は、放置すると後々トラブルや手続きの遅れにつながります。
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相続放棄・限定承認など、家庭裁判所での手続きが必要になるケースもあるため、迷ったときは早めに専門家へ相談することが大切です。
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行政書士は、相続に関する各種書類の作成や官公署への提出手続き、全体の整理・説明を通じて、相続人の皆さまをサポートできます。
私の事務所は川崎市にありますが、内容は全国共通の基本的な考え方です。
「うちの場合はどうしたらいいのか」を知りたいときは、お近くの相続に詳しい行政書士など専門家へ、早めにご相談ください。



