ブログ
12.172025
「数次相続」とは?相続手続きが複雑になるケースと行政書士にできるサポート

数次相続とは?まずは全体像から
相続は一度きり…と思われがちですが、実際には
-
親の相続(一次相続)が終わらないうちに
-
その相続人が亡くなり、次の相続(二次相続・三次相続…)
が続けて発生することがあります。
このように相続が数回にわたって連続して起こり、関係者や手続きが複雑になる状態を「数次相続」と呼びます。
相続人が全国各地に散らばっていたり、名義変更や遺産分割をしないまま年月が経ってしまうと、
-
誰がどの相続で、どの財産を引き継いだのか
-
登記名義や預貯金の名義がどこまで反映されているのか
が分かりにくくなり、手続きが一気に難しくなります。
この記事では、数次相続でありがちなつまずきポイントと、
行政書士に「どこまで」「何を」頼めるのかを整理してお伝えします。
※相続登記の申請代理や、相続税の具体的な計算・申告代理などは、それぞれ司法書士・税理士の業務です。
この記事では、それら他士業の業務を侵さない範囲で説明しています。
数次相続で特に大事になるポイント
1. 相続人を正確に確定する
数次相続では、
-
一次相続の相続人
-
その人が亡くなったあとの二次相続の相続人
が重なり合うため、誰が最終的な相続人なのかを正しく把握することが最初のステップです。
行政書士が支援できる主な内容
-
被相続人の出生から死亡までの戸籍等の収集
-
相続人ごとの戸籍・住民票などの整理
-
「相続関係説明図」の作成
これにより、「誰と誰が話し合いに参加すべきか」を明確にできます。
2. 遺産(財産)の範囲を整理する
数次相続では、
-
一次相続の時点で把握していた財産
-
その後増減した財産
-
二次相続で新たに加わる財産
などを、相続ごとに時系列で整理する必要があります。
行政書士がサポートできること
-
不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書の取得サポート
-
預貯金や有価証券などの一覧表(財産目録)の作成
-
必要書類のリストアップと収集の段取り整理
※不動産の相続登記の申請そのものは司法書士の業務、
※相続税の評価・申告・節税の具体的な検討は税理士の業務となります。
3. 遺産分割協議をどのような順番で進めるか
数次相続では、
-
「まず一次相続分をどう分けるか」
-
「その後、二次相続分をどう扱うか」
といった優先順位の整理が必要です。
行政書士ができること
-
協議に必要な情報を整理し、分割案のたたき台を文書化
-
遺産分割協議書案の作成
-
遠方に住む相続人へ説明するための資料作成 など
※相続人同士が対立し、交渉・代理が必要な場合は弁護士の領域です。
行政書士はあくまで「書類作成」と「話し合いの段取りづくり」を通じてサポートします。
4. 登記・税務の専門家と連携する
数次相続では、
-
不動産の名義変更(相続登記)
-
相続税の申告が必要になるケース
も増えます。
行政書士の役割
-
相続登記に必要な戸籍や協議書の作成・整理
-
相続税がかかりそうなケースでは、税理士に相談すべきタイミングのアドバイス
-
司法書士・税理士など、必要な専門家の紹介や連携窓口
登記申請の代理や相続税の申告書作成は、それぞれ司法書士・税理士の業務なので、
そこはきちんとバトンを渡しつつ、全体を見通した事務面のサポートを行うイメージです。
典型的な数次相続のケース例
ケース1:名義変更をしないまま親子で相続が続いた例
-
祖父が亡くなったときの不動産名義を変えないまま
-
数年後に父が亡くなり、祖父・父と二人分の相続が一度にのしかかった
という相談は、どの地域でもよくあります。
対応の流れ(行政書士が関わる部分)
-
祖父・父それぞれの相続人を戸籍から確定
-
相続関係説明図を作成し、「誰がどの相続に関係するか」を見える化
-
祖父の遺産分割協議書案 → 父の遺産分割協議書案と、順番を整理して作成
-
司法書士へ相続登記に必要な書類一式を引き継ぎ
こうすることで、「どこから手を付ければよいかわからない」の状態から、
一歩ずつ処理できる状態へ持っていきます。
ケース2:兄弟姉妹が全国各地に散らばっている例
相続人が多い・遠方に住んでいる場合、
-
誰がどの書類に署名押印する必要があるのか
-
書類の送り方や回収方法
を整理しないと、手続きが何ヶ月も止まってしまうことがあります。
行政書士に依頼すると、
-
必要な署名・押印の一覧表
-
返送用封筒や説明資料をセットにした「書類パック」の作成
-
進捗管理(誰まで終わっているか)の把握
といった事務負担を任せることができます。
数次相続でありがちなつまずきポイント
-
一次相続の相続登記をしないまま放置していた
-
「相続税はかからないはず」と思い、財産をきちんと洗い出していなかった
-
生前贈与や過去の取り決めが文書になっておらず、きょうだい間で認識が違っていた
-
遺言書が見つかったが、内容や効力の読み取り方がわからない
こうした場合も、まずは
-
現状の整理
-
できること・他士業にバトンを渡すべきことの仕分け
から始めると、必要以上にこじれずに済むことが多いです。
行政書士に依頼すると何をしてもらえる?
数次相続で行政書士がお手伝いできる主な内容を整理すると、次のようになります。
-
相続人調査(戸籍等の収集)と相続関係説明図の作成
-
財産目録の作成サポート
-
遺産分割協議書・合意書・覚書などの作成
-
公正証書遺言を作りたい場合の文案作成・必要資料の整理(公証人との調整は補助)
-
相続登記に必要な書類の作成・整理(登記申請そのものは司法書士へ依頼)
-
相続税の申告が必要かどうか、税理士に相談すべきタイミングの目安をお伝えし、ご紹介
「どの専門家に、どこから頼めばいいのか分からない」という段階から、
全体像を整理してくれる“窓口役”“書類のプロ”として活用していただければと思います。
まとめ
-
数次相続とは、相続が何度か連続して起こり、権利関係・手続きが複雑になる状態のこと
-
大事なのは「相続人の正確な確定」と「財産の全体像の整理」
-
一次相続を放置したまま二次相続に突入すると、手続きが一気に難しくなる
-
行政書士は、戸籍・財産の整理、協議書等の書類作成、他士業との連携を通じてサポートできる
-
登記の代理は司法書士、税額計算や申告は税理士、争いの代理は弁護士と、それぞれの役割分担を意識して動くのが安全
「もうどこから手をつけていいか分からない…」という段階でもかまいません。
まずは状況を整理するところから、一緒にスタートしていきましょう。


