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12.22025
高齢者施設入居前に遺言書を作成すべき理由

高齢者施設への入居は、住環境や生活環境が大きく変わる節目であり、「自分の意思をきちんと残しておきたい」と考える人が増えています。
特に、判断能力が十分なうちに準備できる最後の機会になることも多く、遺言書の作成は、将来の相続手続きを円滑にするための重要なステップです。
遺言書がない場合、財産の扱いや費用負担をめぐって家族が迷ったり、相続手続きに時間がかかることがあります。生前に意思を明確にしておくことで、相続人の負担を軽減し、スムーズな承継につながります。
■ 遺言書を施設入居前に作成するメリット
◎ 1. 判断能力が十分なうちに意思を残せる
遺言書は、本人が「遺言能力」を備えていることが前提です。
体力や健康状態が変化する前の段階で作成しておくことが望ましいといえます。
◎ 2. 財産管理の方針を明確にできる
預貯金・不動産・持ち物などの財産をどう扱うか事前に整理することで、家族が迷うことを防げます。
◎ 3. 介護・医療費の支払いに関連する財産管理の見通しを立てやすい
施設入居後の生活費・医療費を踏まえて、どの財産をどう残すか検討するよい機会になります。
◎ 4. 相続人の負担を軽減
遺言書があることで、相続後の手続き(財産の取り扱い・遺産分割協議など)がスムーズになりやすく、家族の心理的負担を減らせます。
■ 遺言書の種類と特徴
遺言書には次の3種類があります。
行政書士は、それぞれの形式要件や注意点の説明、作成文案の支援が可能です。
● 自筆証書遺言
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手軽だが、方式不備で無効になるリスクがある
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法務局の「自筆証書遺言保管制度」を使うと紛失防止が可能
● 公正証書遺言
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公証人が関与するため、もっとも確実で推奨される
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証人2名が必要
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全国どの公証役場でも作成可能
● 秘密証書遺言
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内容を秘密にできるが、一部の手続きが煩雑なため利用は少ない
■ 行政書士がサポートできる範囲
行政書士は以下のような“書類作成・事務支援”を中心に関与できます。
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財産のリスト化支援
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相続人や関係者の調査(戸籍収集等)
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遺言内容の文案作成補助
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公証役場手続きの案内・日程調整のサポート
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法務局「自筆証書遺言保管制度」の利用方法の説明
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遺言執行者指定の際の文案作成
※家族間の調整・代理交渉・医療判断・判断能力の評価など「他士業の独占領域」には踏み込みません。
■ よくあるケース
【ケース1】施設入居直前に遺言書の必要性を相談された例
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財産の一覧を作成
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相続人関係を整理
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ご本人の希望を整理し、遺言文案作成をサポート
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公正証書遺言を選択し、公証役場の手続き案内を実施
【ケース2】家族構成が複雑で財産の把握が難しい例
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戸籍・財産資料の整理方法を説明
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法務局保管制度の利用を案内
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遺言内容の書き方を文案として整える
■ 遺言書作成時の注意点
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方式(署名・押印・日付など)を必ず守る
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公正証書遺言にすると確実性が高い
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施設入居後の生活費・医療費の見通しを踏まえる
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遺言執行者を誰にするか検討する
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法務局の保管制度を活用する
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状況が変わったら書き直しを検討する
■ 高齢者施設入居前に準備しておくと良いこと
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財産の一覧を作る
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金融機関・不動産・保険契約を整理
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介護費用の支払いが見込まれる資産を確認
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遺言書の作成
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必要に応じて専門家に相談
■ まとめ
高齢者施設への入居は、生活の節目となるタイミングであり、
遺言書を作成するのに大変適した時期です。
遺言書を整えておくことで、
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家族の負担を軽減
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財産管理の方針を明確に
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将来のトラブルを防止
につながります。
行政書士は、遺言書作成に伴う“書類作成支援・文案作成サポート・事務手続きの案内”など、独自の専門性を生かしてサポートできます。
「健康なうちに準備しておく」ことが、安心して施設生活を送るための第一歩です。



