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ペットを遺すための相続プランとは? いま注目される新しい備え方

近年、高齢者の単身世帯や核家族化が進む中で
「自分が亡くなった後、ペットの世話はどうなるのか」
という不安を抱える方が増えています。

日本の民法ではペットは「物」として扱われるため、
人と同じように「相続させる」ことはできません。

そのため、
飼い主の死後、ペットが適切に世話を受けられるようにするための“備え” が必要となります。

本記事では、行政書士の立場から
「ペットの将来を守るための法的仕組み・準備方法」
を、わかりやすく解説します。


1.ペットには相続権がない ― だからこそ事前準備が必要

法律上、ペットは「相続財産」ではなく「物」。
そのため、

  • ペット自身に財産を渡すことはできない

  • 法律上の相続人にはならない

という制約があります。

飼い主が何も準備しないまま亡くなると、

  • 誰が飼育を引き継ぐか決まらない

  • 飼育費をどう負担するか不明

  • 親族が世話をできず、施設への預け入れを検討する事態

など、トラブルが起こりやすくなります。


2.ペットを守るために利用できる主な方法

■① 遺言書で「飼育を引き継ぐ人」+「必要費用の遺贈」を明確化

ペットのために最もよく使われる方法です。

  • 誰に世話を任せるか

  • その人へどのくらいの費用を渡すか

  • ペットの健康管理・生活環境の希望

などを遺言書で明記します。

行政書士は
遺言の形式要件の確認や文面作成のサポート を行うことができます。

※世話を依頼された人に法的義務を課すことはできないため、
 事前に本人同意を得ておくことが重要です。


■② ペットのための「信託」制度(ペット信託)

信託とは、

  • 飼い主が預けた財産を

  • 信頼できる受託者が管理し

  • 指定された目的のために使う

という仕組みです。

ペット信託をつくることで、

  • 飼育費を計画的に使える

  • 飼育者への費用支払いをルール化できる

  • 透明性のある管理が可能

というメリットがあります。

行政書士は

  • 信託の概要説明

  • 必要書類の作成支援

  • 他士業(弁護士・司法書士・税理士)との連携

といった範囲でサポートできます。

※信託契約の法律的検討やトラブル対応、信託財産の登記などは
 行政書士の業務範囲外のため、専門士業との協働が必要です。


■③ ペットの受け入れ先の確保

ペットの将来を守るために重要なのが 受け入れ先の事前同意 です。

  • 家族・親族

  • 信頼できる友人

  • ペットシッター

  • 保護団体

  • 里親制度・終生預かり施設

など、多様な選択肢があります。

遺言書や信託に記載する前に、
必ず受け入れ先と「同意」を取っておく必要があります。


3.行政書士の支援範囲

行政書士ができること

  • 遺言書の文案作成支援(形式面の確認・文章整備)

  • ペット相続プランの相談対応(制度説明)

  • 財産や希望内容の整理

  • 関係者への説明資料の作成

  • 他士業との連携サポート

行政書士ができないこと(他士業の領域)

  • 信託契約の法的代理・交渉

  • 調停・訴訟の代理

  • 紛争性のある案件の法律判断

  • 相続登記の代理(司法書士)

  • 信託税務の判断(税理士)

必要に応じて、弁護士・司法書士・税理士と連携し、
適切な専門家につなぐ形で支援します。


4.ペットを遺す相続プランの作成手順

  1. ペットの情報整理

  2. 引き継ぎ先候補の選定・同意

  3. 飼育費用の概算

  4. 遺言書・信託などの方式を選択

  5. 必要書類の作成

  6. 定期的な見直し

早期に準備することで、
「飼い主の死後に世話が行き場を失う」という最悪の事態を防げます。


5.まとめ

  • ペットには相続権がないため、飼い主の事前準備が不可欠

  • 遺言・信託・受け入れ先の確保を組み合わせるのが効果的

  • 行政書士は書類作成や制度説明の専門家としてサポートできる

  • 紛争性がある案件は弁護士、登記関係は司法書士など、
     他士業と協働して進めることが重要

大切なペットの未来を守るためにも、
「まだ元気だから大丈夫」と考えず、
元気なうちに準備を開始することをおすすめします。

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