行政書士中村俊介事務所

遺産分割でよく起きる悩みの一つが「不公平感」です。
たとえば、相続人の中に生前に多額の援助や不動産の贈与を受けていた人がいると、他の相続人から「不公平ではないか」と感じられることがあります。

このような場面で関係する制度が 「特別受益」 です。

特別受益とは、被相続人が生前に特定の相続人へ与えた 一定の経済的利益 を、遺産分割に反映して公平性を保つための仕組みです（民法903条）。

制度の趣旨や扱いを正しく理解しておくと、相続の話し合いをスムーズに進めるために役立ちます。

■ 特別受益として扱われる可能性がある主な例

法律上、特別受益に該当し得ると言われる典型例としては次のようなものがあります。

• 結婚・養子縁組のための費用

• 住宅取得のための援助

• 事業開始のための資金

• 高額な生前贈与（不動産・多額の金員等）

逆に、以下のようなものは特別受益とみなされにくいとされています。

• 生活費・学費など一般的な扶養の範囲

• 日常的な援助

ただし、最終的な判断は事案ごとに異なるため、法的判断が必要な場面では弁護士への相談が適切です。

行政書士は 制度の説明や整理の補助 は可能ですが、
「これは特別受益に当たる／当たらない」という法的判断は行いません。

■ 特別受益が問題になりやすい理由

• 生前贈与の金額や内容が家族に共有されていない

• 不動産や大きな援助が後から判明する

• 相続人間で受け止め方が異なる

• 贈与が記録として残っていない

これらの事情が重なると、遺産分割時に「公平性をどう考えるか」が争点になりやすくなります。

■ 行政書士が対応できる「特別受益」関連のサポート

行政書士が扱えるのは 書類・事実整理と文書作成の支援 です。

◎ 行政書士ができること

• 特別受益制度の仕組みや一般的な要件の説明

• 生前贈与等の事実整理（ヒアリング・資料確認）

• 相続関係説明図・相続人調査

• 遺産分割協議書の作成支援

• 必要に応じて不動産鑑定士・税理士・弁護士への橋渡し

• 資料の整理方法、保管方法の助言

◎ 行政書士ができないこと（法令上の禁止領域）

• 特別受益の該当性の判断

• 相続人同士の調整・代理交渉

• 不動産や資産価値の評価判断

• 調停・審判における代理

• 紛争解決の助言

「どこまでが行政書士の範囲か」が明確になるよう、すべて適切に線引きし直した表現です。

■ 典型的な事例と、行政書士が支援できるポイント

【例1：生前贈与された不動産があったケース】

• 行政書士が支援できること

  • 贈与契約書・登記情報の確認補助

  • 相続財産や生前贈与の一覧化

  • 協議書に反映させるための文案作成支援

  • 不動産評価が必要な場合の専門家紹介

【例2：生活費援助の範囲が大きいケース】

• 行政書士が支援できること

  • 資料整理（送金記録・通帳など）の方法案内

  • 相続人全体の財産情報をまとめるための文書作成

  • 法的判断が必要な部分を明確化し、弁護士相談を案内

行政書士は調整役ではなく、
事実を正確にまとめ、協議書の形にするための専門家 です。

■ 特別受益に関する注意点

• 生前贈与の記録は必ず保管する（通帳・領収書・贈与契約書など）

• 早めに事実確認・資料整理を行う

• 特別受益か否かは個別判断が必要になる場合がある

• 家族間で情報共有をしておくとトラブル予防になる

• 法的争いに発展しそうな場合は弁護士に相談をつなぐ

■ 行政書士に相談するメリット

• 書類整理と事実関係の把握がスムーズになる

• 相続人関係図や協議書が正確に作れる

• 弁護士・税理士・鑑定士との連携がしやすい

• 紛争予防のための文書化が進められる

■ まとめ

特別受益は、相続における重要な制度ですが、
「何が該当するのか」「どのように扱うのか」
を一般の方が判断するのは容易ではありません。

行政書士は、

• 資料の整理

• 情報の見える化

• 協議書作成の支援
  を通じて、相続手続きを円滑に進めるお手伝いができます。

法的な判断や紛争性がある場合は弁護士と連携し、
適切な形で相続手続きを進めることが大切です。