行政書士中村俊介事務所

かつて日本では、長男が家の地位や財産を引き継ぐ「家督相続」が広く用いられていました。しかし、1947年の民法改正によりこの制度は廃止され、現在はすべての相続人が法律上平等に権利を持つ「現代の相続制度」が採用されています。

とはいえ、家督相続の考え方が完全になくなったわけではありません。地域や家庭によっては「長男が継ぐべき」「家を守る者が優先されるべき」といった意識が残っており、実際の相続手続きとのギャップが混乱を生むことがあります。

本記事では、家督相続と現代相続制度の違いを整理し、現在の相続で気をつけたいポイントを行政書士の視点から解説します。

■ 家督相続とはどのような制度だったのか

家督相続は家の存続を目的とし、

• 家長の地位

• 家の財産

• 家業や家名
  を主に長男が丸ごと継ぐ制度でした。

家が一体として維持されるメリットがあった一方で、

• 女性の相続権が制限される

• 兄弟姉妹間で不公平が生じる

• 個々の財産としての扱いが弱い

といった問題点も多くありました。

■ 現代の相続制度との主な違い

現代の相続制度は、

• 個人の財産

• 個人の権利

• 男女平等
  を前提に設計されています。

◎ 主な相違点

現行法では「長男だから優先」というルールは一切なく、他の相続人と同じ立場になります。

■ 家督相続の名残から生まれる誤解とトラブル

家督相続が廃止されて久しい現在でも、以下のような誤解から相続が複雑になるケースがあります。

• 「長男が中心だから」「跡継ぎだから」と財産を一手に希望する

• 実家や土地を“家の共有財産”と考えてしまう

• 誰が相続人なのか・どのように手続きを進めるのかが曖昧

こうした誤解は、相続人間の意思疎通を難しくしたり、手続きが進まなかったりする原因になります。

■ 行政書士が支援できること

行政書士は、相続手続きに必要な「書類作成」「事実関係の整理」を専門としています。

行政書士ができる主な業務

• 家督相続と現行制度の違いについての一般的説明

• 相続人を確認するための戸籍収集

• 相続関係説明図の作成

• 財産目録作成の補助

• 遺言書作成に関する文案作成サポート

• 相続手続きの流れの案内

• 必要に応じて弁護士・税理士・司法書士を紹介

行政書士ができない業務

• 相続人間の調整・代理交渉

• 相続分の法的判断

• 紛争案件の相談

• 調停・審判への関与

• 税務相談（税理士領域）

■ 現代の相続制度を正しく理解するために

家督相続の慣習やイメージが残っている家庭では、相続手続きが複雑化しやすい傾向があります。
相続をスムーズに進めるためには、

• 法定相続分の理解

• 遺言書の早期準備

• 財産内容の把握

• 相続人の正確な特定
  がとても重要です。

行政書士はこうした「準備段階」のサポートを通じて、相続の負担軽減やトラブル予防に役立ちます。

■ まとめ

家督相続はすでに廃止され、現代の相続制度では性別や出生順位に関係なく相続権が認められます。

しかし、過去の慣習が残っている家庭では誤解や手続き遅延の原因にもなり得ます。
相続を円滑に進めるためには、現行制度を正しく理解し、必要な手続きを早めに準備することが大切です。

行政書士は書類作成や情報整理を通じ、落ち着いて相続を進められるようサポートします。
不安や疑問があれば、早めの相談が安心につながります。