ブログ
11.202025
遺言書に資産目録を添付しなかったことで相続が混乱した事例と学ぶべきポイント

遺言書を作成する際、本文だけでなく「資産目録」を作成・添付しておくことは、円滑な相続に大きく貢献します。
資産目録は法律上の必須要件ではありませんが、相続人が遺産の内容を把握するための非常に重要な資料です。
資産目録がない遺言書は、
-
「何の資産がどれだけあるのか」
-
「遺言の対象財産はどれか」
-
「相続人が確認すべき資料は何か」
といった点で認識の齟齬が生じやすく、結果として相続人の調査負担が増えたり、話し合いが長期間に及ぶケースがあります。
■ 事例:資産目録が無かったために相続が混乱したケース
あるご家庭では、遺言書は作成されていたものの、資産目録が添付されていませんでした。
そのため、
-
不動産の所在地や権利関係
-
預貯金の口座情報
-
有価証券の保有状況
-
形見や動産の所在
などが相続人で把握しきれず、遺産調査に多くの時間がかかりました。
遺言の内容自体は明確であったものの、「そもそも遺言の対象となる財産が何か」 の確認に相続人が苦労し、余計な不安や誤解が生じました。
このような混乱は、地域を問わず全国で発生している典型的な事例です。
■ なぜ資産目録が必要なのか?
資産目録を添付するメリットは次のとおりです。
◎ ① 遺産の全体像が明確になる
不動産・預貯金・株式・動産・負債など、遺産の種類は多岐にわたります。
一覧化しておくことで、相続人は「何を調べるべきか」が一目でわかります。
◎ ② 財産の所在・内容がスムーズに把握できる
相続後に「どこに何があるかわからない」という状況を防ぎます。
◎ ③ 相続人間の誤解・疑念を防ぐ
遺産調査の偏りや情報不足は、相続人間の不要な誤解や摩擦につながります。
◎ ④ 遺言の実効性を高める
財産内容が明確になるため、遺言の趣旨がより正確に理解されます。
行政書士は、資産目録の作成に必要な資料整理・書類作成のサポートを行うことができます。
■ 資産目録には何を記載すべきか?
資産目録は、次のような項目を網羅すると効果的です。
● 不動産
-
所在地
-
地番・種類・面積
-
権利関係(登記事項証明書の内容)
● 預貯金
-
金融機関名
-
支店名
-
種類
-
口座番号
-
作成時点の残高
● 有価証券
-
銘柄
-
数量
-
証券会社名
● 動産
(車・貴金属・骨董品・家財等)
● 負債
-
借入金
-
クレジット残高
-
未払金等
● その他の資産
-
貸付金
-
保険契約
-
デジタル資産(ネット銀行等)
※記載内容の「評価」そのものは専門家(税理士・鑑定士)の分野であり、行政書士は資料整理・リスト化に重点を置きます。
■ 行政書士ができるサポート
行政書士が行えるのは 書類作成・情報整理・資料収集の代行等の“事務手続的サポート” です。
-
資産目録の形式作成
-
必要資料(登記事項証明書・口座情報等)の取得補助(委任状による取得代行含む)
-
必要な情報のヒアリング
-
資産目録と遺言書の整合性の確認(文書としての形式チェック)
-
公正証書遺言の作成手続の案内
-
税理士・司法書士など各士業への橋渡し
※紛争性のある調整・交渉代理・資産の「評価」行為は行いません。
■ 資産目録作成でよくある質問
Q1:資産目録は法的に必須ですか?
→ 必須ではありませんが、添付を強く推奨します。
Q2:資産目録に署名押印は必要?
→ 自筆証書遺言に添付する場合は、署名を付けると「遺言の一部」としての一貫性が高まります。
Q3:評価額は必要?
→ 必須ではありません。
ただし参考値として整理する場合は「どの基準で調べたか」を明記します。
Q4:資産目録はどれくらいの頻度で見直す?
→ 資産の変動が多い方は1〜2年に一度が理想的です。
■ まとめ
遺言書に資産目録を添付しておくことは、遺言の実効性を高め、相続人の負担を減らし、トラブル防止に大きく役立ちます。
資産目録を作ること自体は難しくありませんが、
-
情報整理
-
必要資料の取得
-
書類作成の形式チェック
など、専門家のサポートを受けるとより確実で安心です。
相続が複雑になる前に、早めに準備を進めることをおすすめします。


