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12.82025
【最新版】遺言書作成ニーズに見る世代間ギャップ

高齢化や家族形態の多様化が進むなか、遺言書を準備する世代と、「まだ早い」と感じる世代との意識差がはっきりしてきました。
川崎市のような都市部でも、
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60代・70代以降は「そろそろ遺言を」と考える人が増えている
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40代以下では「相続はもっと先」「自分にはまだ関係ない」と感じる人が多い
という、いわゆる世代間ギャップがよく見られます。
このギャップ自体は自然なものですが、放置すると
「親はきちんと決めたつもり」
「子どもは聞いていない、納得していない」
というすれ違いから、相続時のトラブルにつながることも珍しくありません。
この記事では、行政書士として相続や遺言のご相談を受ける中で感じる、
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世代ごとの遺言書ニーズの違い
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ギャップがトラブルにつながりやすいポイント
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そのギャップを小さくするためにできる工夫
などを、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
1. 世代ごとに違う「遺言書への距離感」
① 若い世代(〜40代くらいまで)に多い傾向
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「遺言は70代以降の話」と思っている
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資産が少ないから自分には関係ないと感じている
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そもそも相続や遺言の仕組みをあまり知らない
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仕事・子育てが忙しく、じっくり考える余裕がない
ただ実際には、
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持ち家・住宅ローン・生命保険・退職金見込み
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独身・事実婚・子どもがいない夫婦 など
「誰に・何を・どう渡したいか」が大きく変わる要素を持っている方も多く、
若くても遺言を書いておくことで将来のトラブルをかなり減らせるケースが少なくありません。
② 高齢世代(主に60〜70代以降)に多い傾向
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「子どもたちに迷惑をかけたくない」という思いが強い
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自宅不動産や預貯金など、具体的な財産が見えてきている
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誰にどれくらい渡すか、ある程度のイメージを持っている
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一方で、子ども世代と本音の話し合いができていないことも多い
その結果、
「自分では“家族のため”に決めたつもりが、
子どもからすると『聞いていない』『不公平だ』と感じる」
という、気持ちのすれ違いが起こることがあります。
2. 世代間ギャップがトラブルにつながりやすい場面
たとえば、こんなパターンです。
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親世代
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「長男には家を継いでほしい」「介護してくれた子に多めに渡したい」と考え、遺言を準備する
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子世代
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事前に何も聞かされておらず、いざ遺言を知って「不公平だ」と感じてしまう
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法律上は遺言である程度自由に分け方を決められますが、
感情面で納得できないと、遺産分割の場がギクシャクしやすくなります。
また若い世代は、
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遺言の効力
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遺留分という最低限の取り分のルール
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遺言がない場合にどう分かれるか
といった基本的な仕組みをまだ知らないことも多く、
「制度を知らないまま感覚だけで“おかしい”と感じてしまう」こともあります。
3. 行政書士が関われる範囲でできる支援
行政書士は、相続や遺言に関する書類作成や事実整理の専門職です。
紛争の代理交渉や調停・裁判の代理は弁護士の業務ですが、
その前の「揉めないように備える段階」で、お手伝いできることはたくさんあります。
たとえば:
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相続の基本ルールや遺言書の種類について、わかりやすく説明する
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戸籍を集めて相続人を整理し、「誰が相続人になるか」を明確にする
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財産の概要を整理するためのメモ作りをサポートする
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ご本人の希望をうかがいながら、遺言書の文案作成をお手伝いする
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公正証書遺言を選ぶ場合、公証人とのやりとりの準備をお手伝いする
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必要に応じて、弁護士・税理士・司法書士など他士業を紹介する
「家族で話す前に、まず頭の中を整理したい」
「法律のことはよく分からないので、基本から教えてほしい」
という段階からでも、十分にサポートできます。
4. 世代間ギャップを小さくするためのヒント
① 若い世代へ:
「資産が少なくても、“誰に何をどう渡したいか”は早めに考えておく」
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夫婦だけ・子どもがいない・再婚などの場合、
「何もしないと法律どおりに分かれる」という結果が、
自分の希望と大きく違うこともあります。 -
いきなり本格的な遺言でなくても、
「将来こうしたい」というメモを作り、状況が変わったら見直していくイメージでも構いません。
② 親世代へ:
「遺言は“黙って書いて残すもの”ではなく、家族と話し合うきっかけにもなる」
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事前に全てを詳細に話す必要はありませんが、
「こう考えている」「こういう意図で遺言を書いた」という
大まかな考え方だけでも共有しておくと、受け止め方が違ってきます。 -
第三者(行政書士など)が同席し、制度の一般的な説明をすることで、
感情論だけにならないようにすることもできます。
※ここでの支援は、あくまで「制度や手続きの一般的な説明」「場づくりのサポート」であり、
特定の相続人の味方として交渉することは、行政書士の業務範囲を超えるため行いません。
5. 遺言書作成の基本的な注意点(世代共通)
世代にかかわらず、次のような点は共通して大切です。
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形式を守ること
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自筆証書遺言なら「全文自書・日付・署名・押印」などの要件があります。
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不安な場合は、公証役場で作る「公正証書遺言」を選ぶ方法もあります。
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保管場所をはっきりさせておくこと
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法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する
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信頼できる家族や専門家に「どこに保管しているか」だけは伝えておく
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定期的に見直すこと
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家族構成・住所・財産状況が変われば、遺言の内容も見直しが必要です。
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他の専門家が必要な場面を知っておくこと
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紛争が生じている、もしくはその可能性が高い場合:弁護士
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相続税の試算や節税の相談:税理士
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不動産の相続登記:司法書士
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行政書士は、自分の業務範囲を超える内容については、
その分野の専門家を紹介したり連携したりしながら、全体の流れがスムーズになるようお手伝いします。
6. まとめ
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高齢世代は「遺言を書きたいけれど、家族にどう伝えるかが不安」
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若い世代は「まだ自分には関係ない」と感じやすい
この**認識のズレ(世代間ギャップ)**が、
相続の場面でトラブルの種になることがあります。
遺言書は、
「財産の行き先を決める紙」でもあり、
「世代をつなぐメッセージ」でもあります。
だからこそ、
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早めに基本的な制度を知る
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自分の考えを整理する
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必要に応じて専門家の手を借りる
というステップを踏んでおくことが、
将来の家族の負担を軽くし、安心して暮らすための大きな助けになります。
行政書士は、
その準備の段階での事実整理・書類作成・一般的な制度説明を通じて、
相続ができるだけスムーズに進むようお手伝いする役割を担っています。
「うちのケースだと、どんな準備から始めればいい?」
といった素朴な疑問からでも、遠慮なく相談して大丈夫です。



